入通院慰謝料の計算方法|赤い本の別表を使った求め方

Red hardcover book with bold Japanese text rests on a desk next to a calculator and scattered papers in a dim office setting.

入通院慰謝料は「赤い本」の別表で計算する

交通事故で負傷した場合の入通院慰謝料を算定する上で、弁護士や裁判所が参照する重要な基準があります。それが、通称「赤い本」(正式名称:民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)です。

この「赤い本」は、過去の膨大な裁判例を分析・集積して作成されており、交通事故の損害賠償実務において広く参照されている基準として扱われています。そのため、弁護士が介入して交渉する場合や裁判になった場合には、この「赤い本」に掲載されている「入通院慰謝料算定表(別表)」を用いて慰謝料額が算定されます。

加害者側の保険会社が提示する金額は、自賠責基準や独自の任意保険基準で計算されているため、この弁護士基準(裁判基準)と比べて低額となるケースがあります。適正な賠償を検討するためには、まずこの「赤い本」の基準を知っておくことが有用です。

参照:公益財団法人 日弁連交通事故相談センター東京支部 赤い本の刊行情報

【3ステップ】赤い本の別表を使った慰謝料の計算方法

それでは、実際に「赤い本」の別表を使って入通院慰謝料を計算する手順を、3つのステップに分けて具体的に解説します。このプロセスを理解することで、ご自身の慰謝料額の目安を把握できます。

ステップ1:計算の基礎となる「治療期間」を確定する

慰謝料計算では、まず、いつからいつまでが計算対象となる「治療期間」なのかを確定させます。この治療期間は、原則として「交通事故発生日から症状固定日まで」の期間を指します。

ここで重要なのが「症状固定」という概念です。症状固定とは、「これ以上治療を継続しても、症状の大幅な改善が見込めない」と医師が医学的に判断した状態を意味します。この症状固定日をもって治療は一区切りとなり、入通院慰謝料の計算期間が確定するのです。

加害者側の保険会社から早期に症状固定を打診されることがありますが、まだ治療の効果が出ている段階で安易に同意してはいけません。必ず主治医と十分に相談し、慎重に判断することが重要です。

交通事故における入通院慰謝料の計算手順を示す3ステップの図解。ステップ1は治療期間の確定、ステップ2は別表の選択、ステップ3は金額の確認。

ステップ2:ケガの状態で使用する別表を選ぶ

治療期間が確定したら、次にご自身のケガの状態に応じて使用する表を選択します。「赤い本」には、以下の2種類の慰謝料算定表が掲載されています。

  • 別表Ⅰ:原則としてこちらを使用。骨折や脱臼、内臓損傷など、比較的重傷な場合に適用されます。
  • 別表Ⅱ:むちうち症で他覚的所見がない場合(レントゲンやMRIで異常が見られないケース)や、打撲・擦り傷などの軽傷の場合に適用されます。

例えば、交通事故で骨折を伴う重傷を負った場合は「別表Ⅰ」を、追突事故によるむちうちで画像所見がない場合は「別表Ⅱ」を用いるのが一般的です。別表Ⅰの方が、慰謝料額は高く設定されています。もし後遺症が残った場合は、この入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料を請求することになります。

ステップ3:入院・通院期間を当てはめて金額を確認する

最後に、確定した治療期間を、ステップ2で選択した別表に当てはめて具体的な金額を確認します。表の構成は以下の通りです。

  • 縦軸:通院期間(月単位)
  • 横軸:入院期間(月単位)

入院期間と通院期間が交差するマスに記載されている金額が、入通院慰謝料の目安となります。

赤い本の慰謝料算定表の仕組みを説明する図解。「入院1ヶ月、通院6ヶ月」のケースでは149万円になることを示している。

例えば、「入院1ヶ月、通院6ヶ月」のケースで見てみましょう。

  • 別表Ⅰ(重傷)の場合:149万円
  • 別表Ⅱ(軽傷)の場合:113万円

このように、同じ治療期間でも適用される表によって金額に大きな差が出ることが分かります。なお、治療が15ヶ月を超える長期に及んだ場合は、15ヶ月の金額を基礎とし、超過した月数分を14ヶ月と15ヶ月の差額を基準に加算していくなどの方法で計算します。これは休業損害など他の損害項目とは別の計算です。

慰謝料が減額される?計算時の注意点

「赤い本」の基準では、原則として「通院期間」をベースに慰謝料を計算しますが、注意すべき点があります。それは、通院頻度が極端に低い場合です。

例えば、通院期間は6ヶ月でも、実際に通院した日数が10日程度というように、通院がまばらだった場合、相手方保険会社から「治療の必要性が低かった」と主張され、慰謝料の減額を求められる可能性があります。

このようなケースでは、裁判実務上、実際の通院期間をそのまま用いるのではなく、実通院日数を基礎に「みなし通院期間」を算定することがあります。

  • 別表Ⅰ(重傷)の場合:実通院日数の3.5倍
  • 別表Ⅱ(軽傷)の場合:実通院日数の3倍

例えば、むちうちで6ヶ月間(180日)治療したものの、実通院日数が20日だった場合、「20日×3倍=60日(2ヶ月)」がみなし通院期間とされ、2ヶ月分の慰謝料しか認められない可能性があるのです。

痛みや不調があるにもかかわらず通院を怠ってしまうと、適正な慰謝料を受け取れなくなるリスクがあります。医師の指示に従い、必要な治療を継続的に受けることが重要です。もし保険会社との交渉や慰謝料計算でお悩みの場合は、一度弁護士に相談することをお勧めします。

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