株式の相続

遺産の中に株式があった場合,遺産分割が終わらないうちに会社から株主総会招集通知が届くことがあります。

相続人がこの株主総会に出たいと思っても,法律に従った手続を踏まなければ株主としての権利を行使することができません。 というのも,遺産の中に株式があった場合,遺産分割が終わらない限り,株式は相続人全員の共有となるからです。

例えば,亡くなった方が3000株の株式を持っていて相続人が2名だった場合,3000株全てについて2名の共有となるのであって,それぞれが1500株ずつ株主の権利を行使できるというわけではありません。

共有状態の株式について権利を行使したい場合,法律は,「共有者は,当該株式についての権利を行使する者一人を定め,株式会社に対し,その者の氏名又は名称を通知しなければ,当該株式についての権利を行使することができない。」と定めています(会社法106条)。 つまり,相続人の間で代表者を決め,それを会社に届け出ないと権利行使ができないということです。

ところが,上記の会社法106条は,ただし書きで,「ただし,株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は,この限りでない。」と定めています。 つまり,代表者を会社に届け出なくても,株主総会に出席した人に会社が同意してくれれば,権利を行使することができるようにも読めます。

では,相続人の間で争いがあって代表者を決めることができない場合でも,会社さえ同意してくれれば株主総会で権利を行使することができるのでしょうか。

この点につき,最高裁は,つい先日の判決で,会社の同意があったとしても,相続人の間で持分の過半数,すなわち相続分の過半数をもって決定しなければ権利行使は不適法になると判断しました(最高裁平成27年2月19日判決)。

つまり,相続人が2名であってそれぞれの相続分が2分の1ずつの場合には,どちらも過半数に届かないので,2名全員の同意がなければ権利行使はできないということです。 相続人が4名であってそれぞれの相続分が4分の1ずつの場合には,3名が同意しなければならないということです。

相続人間で争いがある場合には,過半数の同意を得ることもなかなか難しいと思われます。相続人の中でも,会社の株式について権利行使したい理由は様々ですが,やはり相続人間での話し合いは避けて通れません。相続ではお互いに感情的になっていることも多いですが,冷静な第三者である弁護士が入って誠意あるお話し合いをした結果,解決した事例も多数ございます。

私の経験上,相続に限ったことではありませんが特に相続の場合,解決には,①当事者以外の冷静な第三者,②ある程度の時間,③誠意の3つが欠かせないと感じております。

なお,すでに争いが生じてしまっている事件の場合,代理人となることができるのは弁護士のみであり,行政書士が代理人となることは違法行為となりますので,お困りの際には弁護士へのご相談をお勧めいたします。弁護士費用はこちらのページをご覧下さい。

keyboard_arrow_up

0752555205 問い合わせバナー 法律相談のインターネット予約