過失割合の「著しい過失」とは?具体例や立証責任を弁護士が解説

交通事故の過失割合を左右する「修正要素」とは?

交通事故における過失割合は、事故の類型ごとに定められた過去の裁判例を基にした「基本割合」をベースに決定されます。しかし、実際の事故状況は千差万別であり、画一的な基準だけでは公平な解決に至らないケースが少なくありません。

そこで、個別の事情を反映させるために用いられるのが「修正要素」という考え方です。これは、基本割合に加算または減算される要素のことで、当事者の一方に特に不注意な点があった場合などに適用されます。本記事で解説する「著しい過失」は、この修正要素の中でも特に重要なものの一つです。

「著しい過失」と「重過失」の明確な違い

過失の程度は、軽いものから順に「通常の過失」「著しい過失」「重過失」と段階的に評価されます。「重過失」は、ほとんど故意に近いような極めて悪質な注意義務違反を指します。この両者の違いを正確に理解することが、適正な過失割合を判断する上で不可欠です。

「著しい過失」に該当する具体例

実務上、「著しい過失」とは、通常の過失よりも一段階重い不注意と評価される行為を指します。具体的には、以下のようなケースが典型例です。

  • 脇見運転等による著しい前方不注視
  • 著しいハンドル・ブレーキ操作の不適切
  • 携帯電話等を使用・注視しながらの運転
  • おおむね時速15km以上30km未満の速度違反(高速道路を除く)
  • 酒気帯び運転

これらの行為は、事故の危険性を著しく高めるものとして、過失割合の算定において重く評価されることになります。

交通事故における過失の程度を解説する図解。「通常の過失」「著しい過失」「重過失」の3段階で、それぞれに該当する具体例が示されている。

「重過失」と判断される悪質なケース

一方、「重過失」は「著しい過失」よりもさらに悪質性が高い、故意に比肩するようなケースを指します。具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 酒酔い運転(まっすぐ歩けないほど酩酊している状態)
  • 居眠り運転
  • 無免許運転
  • おおむね時速30km以上の速度違反(高速道路を除く)
  • 妨害運転(いわゆる「あおり運転」)

これらの行為は、事故が発生する危険性が極めて高いことを認識しながら、それを容認して運転していると判断されるため、過失割合も大幅に加算されます。

「著しい過失」が認められた場合の過失割合への影響

相手方に「著しい過失」や「重過失」が認められると、基本の過失割合が修正され、被害者側に有利に変更されます。事故類型や具体的事情により修正幅は異なりますが、別冊判例タイムズ等の実務では、著しい過失は+10%、重過失は+20%が目安として扱われることが多いです。

例えば、基本の過失割合が「あなた:相手=30:70」の事故で、相手に著しい過失が認定されれば「20:80」に、重過失が認定されれば「10:90」に修正される可能性があります。この割合は、最終的に受け取る賠償金や休業損害の金額に直接影響するため、極めて重要なポイントです。

重要|著しい過失を主張するための「立証責任」

相手の「著しい過失」を主張する上で、最も重要な原則があります。それは、過失割合の修正を主張する側が、その事実を客観的な証拠に基づいて証明しなければならないという点です。これを法律用語で「立証責任」と呼びます。

「相手が脇見運転をしていたはずだ」「スピードを出し過ぎていたに違いない」といった主張だけでは、残念ながら過失割合は修正されません。立証できなければ、基本割合のままで交渉が進んでしまいます。

立証のためには、以下のような客観的証拠が極めて有効です。

  • ドライブレコーダーの映像
  • 警察が作成する実況見分調書
  • 目撃者の証言

これらの証拠を確保し、相手の過失を法的に構成して主張するのは、専門的な知識と経験を要します。もし、保険会社の提示する過失割合に納得がいかない、相手の著しい過失を主張したいが証拠が不十分で不安だという場合は、交通事故問題に精通した弁護士に相談することを強く推奨します。専門家の視点から有効な証拠収集のアドバイスや、相手方保険会社との交渉を有利に進めることが期待できます。

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