デジタル遺言書の導入

デジタル遺言書とは?2025年10月から変わった遺言のカタチ

「遺言書は手書きでなければならない」「手続きが煩雑で大変そうだ」——。このようなイメージから、遺言書の作成をためらってはいないでしょうか。しかし、その常識は大きく変わろうとしています。パソコンやスマートフォンで作成できる「デジタル遺言書」の導入に向けた法改正の動きが本格化しているのです。

現在の民法では、ご自身で作成する遺言(自筆証書遺言)の場合、財産目録を除き、本文・日付・氏名を自書し、押印することが原則として定められています(民法968条)。そのため、少なくとも自筆証書遺言としては、パソコン等で作成した本文は無効となるのが原則でした。

しかし、社会のデジタル化に対応し、より多くの方が円滑に遺言を作成できるよう、制度の見直しが進んでいます。この記事では、2025年10月から始まる公正証書遺言のデジタル化を皮切りに、将来導入が検討されている新しい遺言方式まで、デジタル遺言書の最新動向と仕組みを専門家の視点から分かりやすく解説します。

【2025年開始】公正証書遺言のデジタル化で何が変わった?

遺言書のデジタル化において、まず先行して実現するのが「公正証書遺言」の手続きです。2025年10月1日から、全国の公証役場で順次、公正証書の作成手続がデジタル化され、利便性の向上が図られています。

公正証書遺言のデジタル化による変化を比較した図解。従来は公証役場への出頭が必要だったが、2025年からはウェブ会議や電子署名で作成可能になる。

これまで公正証書遺言を作成するには、遺言者と証人が公証役場へ出向く必要がありました。しかし、改正により、全国の公証役場で順次、ウェブ会議システムを利用した公正証書作成手続が可能となり、状況に応じて遠隔地からの手続にも対応できるようになりました。また、署名も電子署名で対応できるようになるため、物理的な移動や押印の手間が大きく軽減されるのです。

ただし、注意点として、これはあくまで「手続き」のデジタル化です。公証人が内容を確認し、法的に有効な遺言書を作成するという公正証書遺言の本質は変わりません。あくまで公証役場での手続きが必要である点に留意が必要です(民法969条)。

この改正の詳細については、以下の日本公証人連合会の発表もご参照ください。
参照:2025年10月1日から公正証書の作成手続がデジタル化されます!

自筆証書遺言もデジタル化へ?検討中の「新たな遺言方式」とは

公正証書遺言のデジタル化に続き、法制審議会では、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式(「保管証書遺言」)の創設が検討されています。これは、遺言制度における抜本的な改革案と言えるでしょう。

法制審議会の要綱案によれば、この新しい方式は以下のような仕組みが想定されています。

  • 全文をパソコン等で作成可能:手書きの必要がなくなり、デジタルデータとして遺言を作成できます。
  • 電子署名に対応:押印に代わり、電子署名によって本人の意思を確認します。
  • 法務局での手続き:作成したデジタル遺言データを、法務局で保管・管理する手続きが必要となります。

同じく公的な手続きを要する公正証書遺言と比較した場合、保管証書遺言は、公証人の助言を受けられない可能性がある一方で、費用を低く抑えられるメリットが想定されています。これにより、これまで遺言書の保管や作成費用にハードルを感じていた方々にとって、新たな選択肢が生まれることになります。

この新方式の議論については、法務省が公開している資料でさらに詳しく確認できます。
参照:民法(遺言関係)等の改正に関する要綱案(案)

【検討中】自筆・秘密証書遺言の「押印」要件の見直し

デジタル化の大きな流れと並行して、従来の遺言方式に関する重要な変更も予定されています。それは、自筆証書遺言と秘密証書遺言における「押印」要件について、不要化を含めた見直しが検討されているという点です。

近年、社会全体で脱ハンコの流れが進んでいますが、その動きが遺言制度にも及ぶ形となります。これにより、遺言書作成の物理的なハードルがまた一つ取り除かれ、より手軽に遺言の準備を進められる環境が整いつつあります。契約書における押印の必要性が見直されているのと同様の動きと言えるでしょう。

デジタル遺言書を検討する際の注意点と専門家への相談

デジタル化によって遺言書の作成手続きは格段に簡便になります。しかし、ここで忘れてはならない最も重要なことがあります。それは、手続きの簡略化と、遺言内容の妥当性は全く別の問題であるという点です。

遺言書の本来の目的は、ご自身の最後の意思を明確にし、残されたご家族が円満に相続手続きを進められるようにすることにあります。たとえ形式が整っていても、内容に法的な不備があれば、かえって深刻な相続トラブルの火種となりかねません。

例えば、特定の相続人の遺留分を侵害するような内容になっていないか、財産の指定方法に漏れや曖昧さはないかなど、法的な観点からのチェックは不可欠です。

デジタル遺言という新しい選択肢を有効に活用するためにも、遺言内容そのものについては、ぜひ一度、法律の専門家である弁護士にご相談ください。当事務所では、ご依頼者様一人ひとりのご状況とご希望を丁寧にお伺いし、法的な不備をできる限り減らし、想いの実現を目指すための遺言書作成をサポートいたします。

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