報道でご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、最高裁は、1月23日付の決定で、婚姻費用の未払分の請求権は当事者が離婚したとしても消滅しないとの判断を示しました。
一般の感覚からしたら当然のことを言っているように思えますが、これは、請求手続の方法と関係があります。
もし、離婚後は未払婚姻費用の請求権が消滅してしまうということになれば、婚姻費用として請求することができなくなってしまいますが、相手が支払いを免れるのも不当なので、この場合、未払婚姻費用の清算を考慮した財産分与が可能です。
しかし、財産分与の方法による場合、未払婚姻費用以外の財産についても対象に含めなければ財産分与の解決にならないため、複雑となり、その分時間がかかるというデメリットがありますし、なにより、分与する財産がなければ財産分与自体ができません。
この点、婚姻費用の請求であれば、原則、お互いの収入のみで決まるため、迅速に判断してもらうことが可能です。
今回の決定により、離婚後であっても、未払婚姻費用のみを、未払婚姻費用の請求として、裁判所の審判で判断してもらうことが可能となりました。
ただし、注意していただきたいのは、婚姻費用の請求権というものは実際に請求しなければ発生しないので、全く請求しないうちに離婚が成立してしまえば、もはや財産分与等の方法をとるしかなくなってしまいます。口頭で請求したとしても、後々、請求したという証拠が出せないので、請求は、離婚成立前に、内容証明郵便か、裁判所への婚姻費用分担調停または審判の申立ての方法で行うことをお勧めいたします。