後遺障害の異議申立|高次脳機能障害で等級を覆す方法

後遺障害の異議申立て、諦めていませんか?

交通事故の後、治療を尽くしても残ってしまった後遺障害。その等級認定の結果通知を見て、「なぜ、この苦しみが正当に評価されないのか」と愕然とされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に、高次脳機能障害のように外見からは分かりづらい症状は、ご本人やご家族が感じている深刻な支障が、書面上の審査だけでは十分に伝わりにくいという現実があります。

「非該当」や想定よりも低い等級という結果に、やり場のない怒りや将来への不安を感じ、「もう覆らないのではないか」と諦めに似た気持ちを抱いてしまうかもしれません。しかし、その判断は最終決定ではありません。異議申立てという、再審査を求める正当な権利があるのです。

適切な準備を行い、症状を客観的に裏付ける新たな証拠を提出できれば、一度下された認定結果が覆る可能性もあります。この記事では、特に立証が難しいとされる高次脳機能障害に焦点を当て、後遺障害等級の異議申立てにおける一般的な流れと、判断の参考となり得る重要なポイントを解説します。交通事故問題の全体像については、交通事故でお悩みの方へで体系的に解説しています。

高次脳機能障害の異議申立て、その流れを解説

異議申立ての手続きと聞くと、複雑で難しいと感じるかもしれませんが、全体の流れを把握することで、漠然とした不安は解消されます。まずは大まかなステップを理解しましょう。

  1. 前回の認定理由の分析:まず、なぜその等級になったのか(あるいは非該当とされたのか)、損害保険会社(共済組合)から届く認定結果の通知内容(理由)を徹底的に分析します。
  2. 追加証拠の準備:分析結果に基づき、前回の審査で不足していた医学的資料や、日常生活の支障を示す証拠を新たに収集します。
  3. 異議申立書の作成・提出:追加証拠を基に、前回の認定がいかに実態と異なるかを論理的に主張する申立書を作成し、提出します。
  4. 再審査:提出された資料に基づき、自賠責保険(共済)審査会で改めて審査が行われます。
  5. 結果の通知:再審査の結果が書面で通知されます。

この中で最も重要なのが「②追加証拠の準備」です。どのような証拠を、どのように集めるかが、結果を大きく左右します。なお、異議申立ての前提となる症状固定の判断についても、慎重に行う必要があります。

後遺障害の異議申立ての流れを示した図解。認定理由の分析から始まり、追加証拠の準備、申立書の作成・提出、再審査、結果通知までの5つのステップが矢印で繋がれている。

なぜ認定が覆るのか?勝敗を分ける3つの重要証拠

異議申立ては、単に「不服です」と主張するだけでは認められません。一度下された判断を覆すには、「前回の審査段階では提出されていなかった、判断に影響を与える新たな証拠」を提示することが不可欠です。特に交通事故の後遺症の中でも立証が難しい高次脳機能障害では、以下の3つの証拠が極めて重要になります。

新たな医学的証拠:客観的な裏付けを示す

ご本人の自覚症状を客観的なデータで裏付けることが、説得力を高める第一歩です。例えば、通常のMRIでは捉えきれない微細な脳損傷を証明するために、T2*(ティーツースター)強調画像といった特殊な撮影方法による画像を追加で提出することが有効な場合があります。また、記憶力や注意力、遂行能力などを数値化する神経心理学的検査を再度実施し、症状の程度を客観的に示すことも重要です。一度目の申請で不足していた検査結果を追加し、症状の医学的根拠を補強しましょう。

医師の意見書:専門家による医学的評価

後遺障害診断書だけでは伝えきれない詳細な情報を補うのが「医師の意見書」です。現在の症状が交通事故によって生じたものであるという因果関係や、それによって日常生活や仕事に具体的にどのような支障が出ているのかを、主治医の専門的な見地から詳細に説明してもらうのです。審査機関は医学的判断を重視するため、専門家である医師による詳細な意見書は、認定結果に大きな影響を与える可能性があります。どのような内容を記載してもらうべきか、事前に弁護士と相談しながら進めることが望ましいでしょう。特に、症状固定後の治療の必要性など、診断書では触れられない部分を補足する役割も期待できます。

介護記録:日常生活の支障を具体的に証明する

高次脳機能障害の「見えにくさ」を可視化する上で、最も強力な証拠となり得るのが、ご家族や介護者による日々の記録です。実際に、在宅介護だけでなく介護施設での介護記録などを証拠として提出し、被害者の日常生活状況を具体的に立証することで、後遺障害等級が適切に評価され、結果が覆ったケースもあります。

ご家族が作成する日々の記録は、「日常生活状況報告書」という書式で提出します。これは単なる日記ではありません。証拠として価値を持たせるためには、以下の点を意識して、客観的かつ具体的に記録を続けることが重要です。

  • いつ、どこで、何ができなかったか(例:○月○日、スーパーで、買うべき物を忘れ、違うものを買ってきた)
  • どのような問題行動があったか(例:○月○日、夕食後、突然大声をあげて怒り出した。きっかけは不明)
  • どの程度の介助が必要だったか(例:○月○日、入浴時、一人で体を洗うことができず、背中を流す手伝いが必要だった)

このような具体的な記録の積み重ねが、診断書だけでは伝わらない「生活の困難さ」を審査機関に伝え、正しい判断を促す力になるのです。

リビングで、娘が父親の様子を介護記録ノートに書き留めている。この記録が後遺障害の異議申立てで重要な証拠となることを示唆している。

異議申立てが却下される理由から学ぶ成功への対策

残念ながら、すべての異議申立てが認められるわけではありません。しかし、却下される典型的な理由を知ることは、それを回避し、成功の確率を高めるための最良の対策となります。

主な却下理由は以下の3つです。

  1. 医学的証拠の不足:症状を裏付ける客観的な検査データや画像所見が不十分なケースです。
  2. 事故との因果関係が不明確:現在の症状が、本当に今回の交通事故によって生じたものか疑わしいと判断された場合です。
  3. 後遺障害診断書や申立書の記載不備:症状や日常生活の支障が具体的に記載されておらず、審査機関に深刻さが伝わらない場合です。

お気づきでしょうか。これらの却下理由は、まさに前のセクションで解説した「3つの重要証拠」を準備することで克服できるものばかりです。新たな医学的証拠や医師の意見書で①と②を、介護記録などの具体的な生活状況の記録で③を補強する。このように、不足しがちな点を新たな資料で補強していくことが、異議申立てを検討する際の基本的な考え方になります。

異議申立ては、被害者やご家族にとって、精神的にも時間的にも大きな負担がかかる手続きです。しかし、適切な弁護士のサポートを受けながら戦略的に準備を進めることで、道は開けます。納得のいかない結果に泣き寝入りせず、まずはご自身の状況を専門家にご相談ください。

参照:自賠責保険・共済の限度額と補償内容|国土交通省

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