相続法改正の解説(預貯金の払戻し)

先般,民法の相続法部分が改正され,相続について従来とは異なった扱いとなることがありますので,複数回に分けて解説させていただきます。

今回は,預貯金の払い戻しについてです。

従来においては,遺産分割の終了,すなわち相続人全員の合意ができるまでは預貯金の払い戻しができず,病院や葬儀費用の支払いに充てようと思っても預貯金を引き出すことができないという場面がありました。

そこで,改正法は,預貯金の払い戻しを,一定の割合までは相続人が単独でできるようにしました。

具体的には,預貯金残高の3分の1に法定相続分を掛けた金額(ただし,150万円が上限)を,金融機関ごとに,相続人が単独で引き出せるようになりました。

具体例として,亡くなった方の預貯金が1金融機関に1200万円あり,相続人が子2人であった場合,子の1人は,1200万円の3分の1の400万円に法定相続分2分の1を掛けた200万円のうち上限150万円を単独で引き出せることになります。

上記の上限額は,金融機関ごとに判断しますので,ほかの金融機関にも1200万円の預貯金がある場合には,それぞれ150万円ずつ,合計300万円を引き出せることになりますが,逆に,1つの金融機関に複数の口座がある場合には,それらの口座の残高を合算した金額が基準となりますので,ご注意ください。

なお,遺産分割終了前に上記の方法により預貯金を引き出した場合,相続分の先取りとなりますので,後の遺産分割では,その分,取得額が減ることになります。

改正法は,原則,令和元年7月1日以降にお亡くなりになった相続に適用されますが,上記の預貯金払戻しについては,令和元年7月1日より前にお亡くなりになった相続でも,令和元年7月1日になれば利用することができますので,ご活用ください。

 

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