遺産分割と葬儀費用

葬儀費用について,亡くなった方の遺産から支出することがよく行われていますが,実は大変危険です。

葬儀費用を遺産から支出した喪主としては,遺産分割の際,遺産から葬儀費用を差し引いた額を分割したいと考えるのが通常だと思いますが,他の相続人が反対した場合,多くの判例は葬儀費用を差し引くことを認めていません。葬儀費用は喪主が負担するものであると判断しています。

具体例を挙げますと,葬儀費用を支出する前の遺産が1000万円で,そこから葬儀費用として200万円を支出した場合,仮に相続人を4人として法定相続分を4分の1とすると,遺産1000万円から葬儀費用200万円を差し引くことが認められたときには,800万円を4人で分けるので,喪主が取得する金額は200万円となります。

ところが,遺産から葬儀費用を差し引くことが認められないときには,1000万円を4人で分けるので,他の相続人は250万円を取得できますが,喪主は葬儀費用200万円を負担するので50万円しか取得できないことになります。

このようなことを防止するためには,葬儀の前に相続人間で葬儀費用の分担をきちんと取り決め,遺産から支出する場合には他の相続人から同意書面をとっておく必要があります。遺産分割の争いが審判になった場合には証拠が必要となるからです。

お身内がお亡くなりになった場合には,悲しみや忙しさに追われ,法的なことまで考える余裕がないと思いますので,普段から気軽に相談できるかかりつけの弁護士は大きな心の支えになると思います。当事務所は専門事務所ではなくすべての法的トラブルを扱う事務所ですので,かかりつけ弁護士として皆様のお役に立てれば幸いです。

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