まず確認!あなたは今どの段階?遺産分割手続き診断フロー
ご家族が亡くなられ、悲しみに暮れる間もなく、相続という複雑な手続きに直面し、何から手をつけていいか分からずご不安なことと思います。特に遺産分割は、ご親族間の感情的な対立にも発展しかねず、精神的なご負担も大きいのではないでしょうか。
まずは落ち着いて、ご自身の状況を整理してみましょう。以下の簡単な診断で、あなたが今どの段階にいて、次に何をすべきかの道筋が見えてくるはずです。

この診断でご自身の状況が把握できたでしょうか。この記事では、それぞれのステップについて、具体的な手続きや注意点を詳しく解説していきます。あなたの不安を少しでも和らげ、次の一歩を踏み出すためのお手伝いができれば幸いです。
遺産分割の3つのステップと基本的な考え方
遺産分割は、故人(被相続人)が遺した財産を、相続人全員で分けるための手続きです。遺言書がなく、相続人が複数いる場合などは、相続人全員で遺産の分け方を決める(遺産分割協議等を行う)のが一般的です。遺産分割を長期間放置してしまうと、権利関係が複雑になるなどのリスクが生じることもあります。
手続きは、基本的に以下の3つのステップで進みます。まずは話し合いから始め、それが難しい場合に裁判所の手続きへと移行するのが一般的な流れです。
- 遺産分割協議:相続人全員での話し合い
- 遺産分割調停:家庭裁判所での話し合い
- 遺産分割審判:家庭裁判所による最終的な決定
また、遺産の分け方には主に3つの方法があります。どの方法が最適かは、財産の種類や相続人の希望によって異なります。
- 現物分割:不動産は長男に、預貯金は次男に、というように財産そのものを分ける方法。
- 換価分割:不動産などを売却して現金化し、そのお金を相続分に応じて分ける方法。
- 代償分割:特定の相続人が不動産など価値の大きい財産を相続する代わりに、他の相続人に「代償金」として現金を支払う方法。
それでは、各ステップを詳しく見ていきましょう。
ステップ1:相続人間の話し合い「遺産分割協議」
最初のステップは、相続人全員での「遺産分割協議」です。これは、最も円満かつ迅速に解決できる可能性のある方法です。必ずしも全員が一堂に会する必要はなく、電話や手紙、メールなどでのやり取りでも問題ありません。大切なのは、相続人全員が内容に合意することです。この協議で合意した内容をまとめたものが「遺産分割協議書」であり、この書類の作成が協議のゴールとなります。
ステップ2:裁判所での話し合い「遺産分割調停」
相続人間での話し合いがまとまらない、あるいは感情的になってしまい冷静な議論ができない、といった場合には、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。「裁判所」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、調停はあくまで「話し合い」の場です。家庭裁判所が選任した中立な立場の「調停委員」が間に入ることで、当事者同士が直接顔を合わせることなく、冷静に話を進められるというメリットがあります。より詳しい家事調停の流れについては、別の記事でも解説していますので、ご参照ください。
ステップ3:裁判所による最終決定「遺産分割審判」
調停でも話し合いがまとまらなかった場合、最終的な手段として「遺産分割審判」の手続きに移行します。審判では、当事者の話し合いではなく、裁判官が各相続人の事情や提出された資料などを基に、法的な観点から最も公平と考えられる分割方法を決定します。つまり、裁判所が強制的に遺産分割の内容を決めるということです。調停で話し合いがまとまらない場合は審判手続に移行し、裁判所が分割内容を決定します。もっとも、審判の内容に不服がある場合は、即時抗告などの不服申立てが可能なため、手続きが続くこともあります。
遺産分割をしないで放置してしまうリスクについては、遺産分割しないとどうなる?のページで詳しく解説しています。
【ステップ1】遺産分割協議書の作成方法と注意点
遺産分割協議で合意に至ったら、その内容を証明するために「遺産分割協議書」を作成します。この書類は、不動産の相続登記や預貯金の名義変更など、様々な相続手続きで必要となる非常に重要なものです。
作成の基本的な手順は以下の通りです。
- 相続人の確定:故人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取り寄せ、相続人全員を正確に把握します。
- 相続財産の調査・確定:不動産、預貯金、有価証券など、すべての財産を漏れなくリストアップします。
- 分割方法の協議:誰が、どの財産を、どのように相続するかを全員で話し合い、合意します。
- 協議書の作成・署名押印:合意内容を書面にし、相続人全員が署名し、実印を押印します。
遺産分割協議書に記載すべき必須項目
遺産分割協議書には、法的に定められた形式はありませんが、後の手続きをスムーズに進めるために、以下の項目は必ず記載しましょう。
- 被相続人の情報:氏名、本籍、死亡年月日を正確に記載します。
- 相続人全員の合意:協議の結果、全員が合意した旨を明記します。
- 相続財産の詳細:
- 不動産:登記事項証明書(登記簿謄本)のとおりに、所在地、地番、地目、地積などを記載します。
- 預貯金:金融機関名、支店名、預金種別、口座番号、名義人を正確に記載します。
- 自動車:車検証のとおりに、登録番号、車台番号などを記載します。
- 誰がどの財産を相続するか:具体的な分割内容を明確に記載します。
- 作成日付:協議が成立した日付を記載します。
- 相続人全員の署名・実印:全員が自署し、実印を押印します。印鑑証明書も添付します。

ここを間違えると無効に?作成時の4つの注意点
せっかく作成した協議書が無効になったり、手続きで使えなかったりする事態は避けたいものです。以下の点には特に注意してください。
- 相続人が一人でも欠けている:後から知らなかった相続人が現れた場合、協議は無効になります。戸籍をしっかり遡って調査することが不可欠です。
- 署名・押印に不備がある:必ず相続人本人が自署し、実印で押印してください。認印や三文判では、法的な手続きに使えない場合があります。
- 財産の記載が不正確:財産が特定できないような曖昧な記載では、名義変更などの手続きができません。登記事項証明書や通帳などを確認し、正確に書き写しましょう。
- 適切な代理人がいない:相続人に未成年者がいる場合、原則として親権者(法定代理人)が手続きを行いますが、親権者自身も相続人となり利益相反が生じる場合などは、家庭裁判所で特別代理人を選任して協議に参加してもらう必要があります。また、認知症等で判断能力が不十分な方がいる場合は、成年後見人が協議に参加します。
なお、遺産分割協議に合意して協議が成立すると、相続を単純承認したとみなされ、相続放棄が認められなくなる可能性があります。相続放棄を検討している場合は、協議に参加・合意する前に慎重に判断しましょう。
【ステップ2】遺産分割調停の申し立てと必要書類
話し合いでの解決が難しい場合は、家庭裁判所での遺産分割調停を検討します。ご自身で手続きを進めることも可能ですが、流れを理解しておくと安心です。
- 申立先の決定:相手方(他の相続人)の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てます。
- 申立書の作成:裁判所のウェブサイトから書式を入手し、必要事項を記入します。
- 必要書類の収集:戸籍謄本など、多くの書類が必要になります。
- 申し立て:申立書と必要書類、収入印紙、郵便切手を裁判所に提出します。
申立書の書式については、裁判所のホームページで確認することができます。
必ず準備すべき書類一覧チェックリスト
調停の申し立てには、多くの書類が必要です。収集に時間がかかるものもあるため、早めに準備を始めましょう。
- 遺産分割調停申立書
- 被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票または戸籍附票
- 遺産に関する資料
- 不動産:登記事項証明書、固定資産評価証明書
- 預貯金:通帳の写しや残高証明書(他の相続人が通帳を見せてくれない場合も対応方法はあります)
- 株式:証券会社の残高証明書 など
※事案によって追加で書類が必要になる場合があります。
調停の流れと期間の目安
申し立てが受理されると、第1回の調停期日は申立てから約1~2ヶ月後に指定されることが多いです。調停は、通常1ヶ月に1回程度のペースで開かれ、解決までの期間は目安として1年前後と紹介されることもありますが、事案によって数ヶ月で終わる場合もあれば、1年以上かかる場合もあります。期日当日は、調停委員が申立人と相手方から別々に話を聞く形で進められるため、相手と直接顔を合わせて感情的に対立する心配はありません。話し合いがまとまれば「調停調書」が作成され、調停は成立となります。まとまらなければ「不成立」となり、自動的に審判手続へ移行します。
調停を弁護士に依頼するメリットと費用
調停はご自身でも進められますが、弁護士に依頼することで多くのメリットがあります。
- 法的な主張を的確に伝えられる:ご自身の希望を法的に整理し、調停委員に説得力をもって主張できます。
- 精神的な負担の軽減:相手方との感情的な対立を避け、冷静な交渉が可能になります。
- 手続きの手間を省ける:煩雑な申立書の作成や必要書類の収集、裁判所とのやり取りをすべて任せられます。
当事務所では、遺産分割調停の着手金は33万円(税込)から、報酬金は得られた経済的利益の10%~16%(税別)となっております。費用はかかりますが、それに見合うだけのメリットを感じていただけるはずです。
【ステップ3】遺産分割審判の流れと弁護士の役割
調停が不成立となった場合、手続きは自動的に「遺産分割審判」に移行します。審判は、当事者の主張や提出された証拠に基づき、裁判官が最終的な分割方法を決定する手続きです。もはや話し合いの場ではなく、法的な主張と立証がすべてとなります。
審判では、裁判官が定めた期日に、当事者双方が主張書面や証拠を提出し、法的な議論を戦わせます。最終的に裁判官が「審判」という形で分割内容を決定し、その内容は法的な強制力を持ちます。

審判で有利な判断を得るために弁護士ができること
審判手続は非常に専門的であり、一般の方がご自身で対応するのは困難です。法的な主張・立証が中心となる審判において、弁護士の役割は極めて重要になります。
- 法的主張の組み立て:あなたの希望が法的に正当であることを、裁判官が納得できるよう論理的に主張書面を作成します。
- 証拠の提出:主張を裏付けるための客観的な証拠(不動産の鑑定書、過去の贈与の記録など)を適切なタイミングで提出します。
- 裁判官とのやり取り:専門的な法律用語が飛び交う裁判官とのやり取りも、すべて代理人として対応します。
ご自身の正当な権利を守り、納得のいく結果を得るためには、弁護士のサポートが不可欠と言えるでしょう。
審判を弁護士に依頼した場合の費用
当事務所で審判手続きをご依頼いただく場合の費用は、調停と同様です。着手金は33万円(税込)から、報酬金は得られた経済的利益の10%~16%(税別)となります。なお、調停から引き続きご依頼いただく場合には、着手金を減額するなどの対応もしておりますので、ご安心ください。
遺産分割は誰に相談すべき?弁護士と他士業の違い
相続問題を相談できる専門家には、弁護士の他に司法書士、税理士、行政書士などがいます。しかし、それぞれ対応できる業務範囲が法律で定められており、特に「争い」があるケースでは、その違いが重要になります。

司法書士は相続登記、税理士は相続税申告の専門家ですが、相続人間で意見が対立しているような法律事件について、報酬を得る目的で代理して交渉したり、裁判所手続(調停・審判等)で代理人として活動したりすることは、弁護士法72条との関係で、原則として弁護士(または法律で認められた範囲の代理権を持つ者)に限られます。争いがある、または争いに発展する可能性が高い場合は、早めに弁護士へ相談するのが安心です。
まとめ|遺産分割のお悩みは早めに弁護士へご相談ください
この記事では、遺産分割の3つのステップ「協議」「調停」「審判」について、その手続きと注意点を解説しました。
遺産分割は、まずは相続人全員での話し合い(協議)から始めるのが基本です。しかし、万が一話し合いがまとまらなくても、調停や審判といった法的な解決手段が用意されています。大切なのは、感情的な対立が深刻化したり、手続きが複雑になりすぎたりする前に、専門家へ相談することです。
私たち早川法律事務所は、これまで数多くの相続問題に対応してまいりました。ご依頼者様のお気持ちに寄り添いながら、法的な専門知識を駆使して、最善の解決策をご提案いたします。初回のご相談は1時間無料ですので、一人で悩まず、どうぞお気軽にお問い合わせください。
このテーマの全体像については、相続(遺産分割、相続放棄)で体系的に解説しています。

