持ち家を残して借金を整理する方法|弁護士が解説

持ち家を手放したくない…借金問題を解決する第一歩

「住宅ローンの返済がまだ残っているのに、カードローンやキャッシングの返済も重なって、毎月の支払いが本当に苦しい…」
「このままだと、大切にしてきたこの家を手放さなければならないかもしれない…」

借金の返済に追われる中で、ご家族とのかけがえのない思い出が詰まったご自宅のことまで考え、夜も眠れないほどの不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。

ご安心ください。借金の問題を解決するために、必ずしもご自宅を手放さなければならないわけではありません。

国が認めた法的な手続である「個人再生」には、あなたの大切な持ち家を守りながら、借金の負担を大きく減らすための方法がきちんと用意されています。

この記事では、弁護士として15年以上にわたり、千葉市で多くの借金問題に悩む方々をサポートしてきた経験から、「持ち家」を残して借金を整理するための具体的な方法を、専門用語をできるだけ使わずに、分かりやすく解説していきます。

この記事を最後までお読みいただければ、ご自身の状況に合った最善の解決策が見つかり、漠然とした不安が「解決できるかもしれない」という希望に変わるはずです。まずは一歩、踏み出してみましょう。

状況別】あなたに合う手続は?持ち家を残すための診断フロー

持ち家を残しながら借金を整理する方法は、主に「任意整理」と「個人再生」の2つです。

どちらがご自身の状況に適しているか、簡単な質問に答える形で確認してみましょう。

【質問1】住宅ローンはありますか?

  1. はい → 質問2へ
  2. いいえ(住宅ローンは完済済み、または元々ない) → 質問3へ

【質問2】住宅ローン以外の借金が多額で、元本を減額しなければ住宅ローンの返済も厳しくなりそうですか?

  1. はい「個人再生」が有力な選択肢です。
  2. いいえ(他の借金の将来利息をカットすれば住宅ローンは問題なく返済できる)「任意整理」が有力な選択肢です。

【質問3】借金の元金を3年~5年程度で返済できる見込みはありますか?

  1. はい「任意整理」が有力な選択肢です。
  2. いいえ(元金の返済だけでも難しい)「個人再生」を検討する必要があります。

いかがでしたでしょうか。これはあくまで簡易的な診断ですが、ご自身の状況と解決策の方向性が見えてきたかと思います。

次章から、それぞれの方法について、さらに詳しく見ていきましょう。

持ち家を残すための2つの主な方法【任意整理・個人再生】

電卓で計算する男性

それでは、「任意整理」と「個人再生」という2つの手続について、それぞれの特徴を比較しながら詳しく解説します。

どちらもご自宅などの財産を守りながら借金問題を解決できる可能性がある手続ですが、仕組みや効果は大きく異なります。

  任意整理 個人再生
借金の減額効果 将来利息のカットが中心(元金は減らない) 元金を大幅に圧縮(原則1/5~1/10)
対象となる借金 交渉する相手を選べる(例:カードローン会社のみ) 原則すべての借金(住宅ローンを除く)
住宅ローン 手続の対象から外して返済を続ける 住宅ローン特則を利用して返済を続ける
手続きの複雑さ 比較的簡易 裁判所を通すため複雑で、期間も長い
メリット 手続が柔軟で、周囲に知られにくい 借金を大幅に減らせる、住宅ローン付住宅を守る強力な制度がある
デメリット 元金は減らないため、減額効果は限定的 手続が複雑、官報に掲載される
任意整理と個人再生の比較

① 任意整理:住宅ローン以外の借金を整理して家を守る

任意整理は、裁判所を通さずに、弁護士がカードローン会社や消費者金融などの債権者と直接交渉し、将来発生する利息(将来利息)をカットしてもらい、残った元金を3年~5年程度で分割返済していく合意を目指す手続きです。

任意整理の最大のメリットは、交渉する相手を選べる点にあります。

そのため、住宅ローンを組んでいる金融機関は交渉の対象から外し、これまでどおり返済を続ける一方で、返済が苦しいカードローンやキャッシングだけを整理対象にすることができます。これにより、ご自宅に影響を与えることなく、月々の返済負担を軽減することが可能になるのです。

この方法は、住宅ローン以外の借金がそこまで大きくなく、将来利息がなくなれば元金の返済は可能という方に適しています。

② 個人再生:住宅ローン特則で借金を大幅に減額し家を守る

個人再生は、裁判所に申立てを行い、法律に基づいて借金を大幅に減額してもらい、その減額された借金を原則3年(最長5年)で分割して返済していく手続です。

どの程度減額されるかは、借金の総額や保有資産の価値などによって法律で基準が定められており、例えば借金が500万円超1,500万円以下なら原則5分の1に、3,000万円超5,000万円以下なら原則10分の1に圧縮される可能性があります。

そして、持ち家がある方にとって個人再生の最大の切り札となるのが「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」です。

この特則を利用することで、住宅ローンはこれまでどおり(または返済計画を見直して)返済を続けることを条件に、それ以外の借金だけを大幅に減額することができます。

つまり、住宅ローン以外の借金の負担を劇的に軽くすることができるのです。

この方法は、借金総額が大きく、任意整理では解決が難しいけれど、ご自宅だけはどうしても手放したくないという方に最適な選択肢と言えるでしょう。

【重要】個人再生の住宅ローン特則を利用するための条件

何かを紹介する男性

持ち家を守るための非常に強力な制度である「住宅ローン特則」ですが、残念ながら誰でも無条件に利用できるわけではありません。

法律で定められたいくつかの条件をクリアする必要があります。

  • ご自身が所有し、居住している家であること
    投資用マンションや、ご自身が住んでいない不動産は対象外です。
  • 住宅の購入やリフォームのためのローンであること
    事業資金の借入れなど、住宅とは関係のない目的で組んだローンは対象になりません。
  • 住宅ローン以外の抵当権がついていないこと
    住宅ローン特則の適用可否は、住宅ローン以外の抵当権の有無やその設定目的、債権者との優先関係などによって変わります。
    例えば、事業資金の借入れのためにご自宅を担保に入れて別の抵当権を設定しているようなケースでは、利用が困難となる可能性が高いため、専門家による個別の判断が必要です。
  • 保証会社による代位弁済から6ヶ月を経過していないこと
    住宅ローンの滞納が続き、保証会社が代わりに返済(代位弁済)した場合でも、そこから6ヶ月以内であれば特則を利用できる可能性があります。

これらの条件は専門的な判断を要する部分も多いため、「自分は当てはまるのだろうか?」とご不安に思われたら、一度弁護士にご相談いただくのが確実です。

家の価値は影響する?オーバーローンとアンダーローン

個人再生の手続では、ご自宅の資産価値と住宅ローンの残高の関係性も重要なポイントになります。

これは「清算価値保障の原則」というルールに関係してきます。

簡単に言うと、「もし自己破産した場合に債権者に分配されるであろう財産額(清算価値)以上の金額は、個人再生でも返済しなければならない」というルールです。

  • オーバーローン(住宅ローン残高 > 家の価値)
    例えば、住宅ローンが2,000万円残っていて、家の価値が1,500万円の場合です。
    この場合、家を売却してもローンが残るため、家の資産価値は実質的にゼロと評価されることが多く、返済額に影響しにくい(つまり、有利に働くことが多い)傾向にあります。
  • アンダーローン(住宅ローン残高 < 家の価値)
    例えば、住宅ローンが1,000万円残っていて、家の価値が2,000万円の場合です。
    この場合、1,000万円のプラスの資産があるとみなされ、その分が清算価値に上乗せされるため、結果として再生計画での返済額が増える可能性があります。

ご自身の状況がどちらに当てはまるかによって、返済計画が大きく変わる可能性があるため、専門家による正確な資産評価が不可欠です。

【事例】競売申立て後でも個人再生で家を守れたケース

ここまで法律の仕組みをお話ししてきましたが、実際に私が担当した案件で、非常に厳しい状況からご自宅を守ることができた事例があります。

弁護士の経験談:絶望の淵から家を守った個人再生

ご相談に来られたのは、住宅ローンの滞納が続いてしまい、ついに保証会社から裁判所にご自宅の競売を申し立てられてしまったという方でした。

「もう、この家を出ていくしかないのでしょうか…」と、ご相談の時点では完全に諦めかけていらっしゃいました。

競売手続が始まってしまうと、時間との勝負になります。私たちはすぐに状況を分析し、個人再生の申立て準備を急ぎました。

そして、裁判所に競売手続の中止を求める申立てと同時に、個人再生の申立てを行ったのです。

結果として、裁判所は私たちの申立てを認め、競売手続は中止され、無事に住宅ローン特則を利用した再生計画が認可されました。

この経験から私が強くお伝えしたいのは、「競売を申し立てられたからといって、諦めるのはまだ早い」ということです。

法的な手続が開始されてしまった後でも、迅速かつ的確に対応すれば、大切なご自宅を守れる可能性は残されています。絶望的な状況に思えても、まずは専門家にご相談いただきたい、と心から思います。

注意!こんな場合は持ち家を失うリスクがあります

「任意整理」や「個人再生」は持ち家を残すための有効な手段ですが、一歩間違えると、かえって家を失う事態になりかねません。

特に注意すべき典型的なケースを2つご紹介します。

  • 個人再生後に返済計画が頓挫する
    個人再生では、認可された再生計画どおりに返済を続けていく必要があります。
    もし途中で返済が困難になると、再生計画が取り消され、最悪の場合、自己破産に移行せざるを得なくなり、家を手放すことにもなりかねません。無理のない返済計画を立てることが非常に重要です。
  • 税金の滞納で家が差し押さえられる
    債務整理で減額できるのは、カードローンや消費者金融などの民間の借金です。固定資産税や住民税などの税金(公租公課)は対象外であり、支払義務は残ります。税金を滞納し続けると、役所によってご自宅が差し押さえられ、公売にかけられてしまう可能性があります。

こうしたリスクを避け、安全に手続を進めるためにも、専門家である弁護士のサポートは不可欠です。

持ち家と借金でお悩みなら、弁護士への相談が解決の近道です

家を両手で包み込む

ここまで、持ち家を残しながら借金を整理する方法について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

「任意整理」と「個人再生」。どの手続がご自身の状況にとってベストな選択なのか、ご自身だけで判断するのは非常に難しいかと思います。

弁護士にご相談いただければ、以下のようなサポートを通じて、あなたの負担を大きく軽減することができます。

  • あなたに最適な解決策のご提案:借金の総額、収入、ご家族の状況などを丁寧にお伺いし、15年以上の経験に基づいて、あなたにとって最善の解決策を一緒に考えます。
  • 債権者からの督促ストップ:弁護士が介入通知(受任通知)を送付すれば、原則として貸金業者からの直接の取り立てや連絡は止まります
    精神的なプレッシャーから解放され、落ち着いて生活再建に集中できます。ただし、債権者側の事務処理の都合で連絡が完全に止まるまでに数日かかる場合や、一部の例外的なケースはあります。
  • 複雑な手続や交渉の代行:裁判所に提出する膨大な書類の作成や、債権者との交渉など、専門的で煩雑な手続はすべて弁護士が代行します。

早川法律事務所では、弁護士への敷居が高いというイメージを払拭し、誰もが安心してご相談いただけるよう心がけております。

また、弁護士費用についても、ご契約前に明確にご説明し、委任契約書に記載のない費用を請求することはございません。追加で費用が発生する可能性がある場合には、必ず事前にご説明し、ご納得いただいた上で手続を進めますのでご安心ください。

「家を守りながら、借金問題を解決したい」
その強いお気持ちを、どうか一人で抱え込まないでください。まずは、あなたの今の状況をお聞かせいただくことから始めませんか。

私たちが、解決への道を照らすお手伝いをいたします。 どうぞお気軽に、当事務所のご相談のご予約はこちらからお問い合わせください。

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