相続で,遺産分割をした後に認知の裁判が確定する場合があります。この場合,認知された者は新たな相続人となりますが,すでに行われた遺産分割は無効とはなりません。認知された者は,遺産分割を終了した他の相続人に対し,金銭請求をすることになります(民法910条)。つまり,認知された者は,不動産や株式を取得したいと思っても,金銭しか請求できないことになります。
ここで問題となるのが,亡くなった人に資産だけでなく借金もあり,すでに遺産分割を終了した他の相続人が借金を支払っている場合,認知された者は,他の相続人に対し,資産から借金を引いた額しか請求できないのか,それとも借金を無視して資産の額のみを請求できるのかです。
この点につき,最高裁令和元年8月27日判決は,借金を無視して請求できると判断しました。
その理屈は,遺産分割とは資産のみを分割する手続であり,借金は遺産分割の対象とならずに当然に相続人に相続されるものだから,というものです。
つまり,認知された者は,借金を考慮しないで資産の額に応じた金銭を請求できるということになりますが,借金も当然に相続しているということになりますので,借金を支払った他の相続人は,認知された者に対し,自己が立替えたことになっている認知された者の借金を請求できるということにもなります。