消費者金融等と長年お取引をしている方の中には,一度全額を返済したが,数年後にまた借り始めたという方が多くいらっしゃいます。
昔の消費者金融等のような高い金利で貸し借りを続けていると,過払金が生じることがあることは皆様もご存じだと思いますが,取引の中断期間がある場合,中断期間も含めて一連で計算するか,中断前と中断後で分けて計算するかによって,結果が大きく変わります。
一連で計算すれば過払金が生じる場合であっても,中断の前後に分けて計算すると,中断前の取引について過払金が生じていても消滅時効が成立してしまう上に中断後の取引で借入金が残ってしまう場合があります。
そして,一連で計算するか分けて計算するかは諸処の事情を考慮して裁判所が決定します。
今回ご紹介する最高裁の事例は,一連計算が否定された結果,中断前の取引については過払金が生じていたものの消滅時効が完成し,中断後の取引では借入金が残ってしまったというものです。
この事例について,東京高裁は,中断前の過払金は時効で消滅しているのでこれを返してもらうことはできず,中断後の取引で残った借入金は全額支払う義務があると判断しました。
一般的な感覚では,過払金は返ってこないのに借金は全額払わされるというのは不公平なように思われます。せめて,残った借金と過払金を相殺したいと考えるのが人情ではないでしょうか。
この点につき,最高裁は,残った借金と時効で消滅した過払金とは相殺できると判断しました。正確に言うと,訴訟において過払金が時効により消滅したと判断されることを条件に,相殺の主張をすることは許されるというものです(最高裁平成27年12月14日判決)。
貸金業者と高い金利で長年お取引をされている方で,途中に中断期間がある場合,裁判所で一連計算をしてもらうのが一番ですが,それが否定されても相殺が可能な場合がございますので,弁護士にご相談下さい。