今さらの話題ではありますが,とある芸能人夫婦の子どもにつき,本当に夫と親子関係があるかどうかが判断された訴訟がありました。
この事件では,子どもが婚姻からちょうど200日目に生まれているとのことですが,実は,子どもが201日目に生まれていれば夫は敗訴しておりました。子どもが生まれた日付が夫の勝敗を分けたのです。
その理由は,法律上,婚姻が成立した日から200日経過後に生まれた子どもは夫の子どもと推定されてしまうためです(民法772条)。200日目であれば夫の子どもと推定されませんが,201日目であれば推定されてしまいます。
推定されてしまった場合,夫が争うためには,原則として,出生を知った時から1年以内に訴えを提起する必要があり(民法777条),1年を過ぎてしまうと,特別な事情がない限り争うことができません。
ここで,DNA鑑定で親子関係が否定されれば特別な事情と言えるのではないかとの疑問が生じますが,最高裁は,DNA鑑定で親子関係がないことが明らかであっても争えないと述べていますので(最高裁平成26年7月17日判決),夫が出生を知った時から1年を過ぎて訴えを起こしたとしても,DNA鑑定の他の特別な事情がなければ夫は敗訴します。
つまり,とある芸能人夫婦の子どもが婚姻から201日目に生まれていれば,DNA鑑定の他の特別な事情がなければ夫は敗訴しておりましたが,実際には200日目に生まれたため,夫の子どもと法律上推定されず,DNA鑑定の結果によって争うことができたということです。
ちなみに,最高裁が言う特別の事情とは,妊娠成立時に既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ,又は遠隔地に居住して,夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合を言います。
離婚事件や相続事件のご依頼を受けていると,男性が親子関係を疑ってDNA鑑定を持ち出すことがありますが,子どもが婚姻成立から200日後または離婚成立から300日以内に生まれた場合には,特別な事情がない限り親子関係は覆されませんので,親子関係が争いとなった場合には当事務所にご相談下さい。